「観測地点」

Web展示:豊岡演劇祭2020
2020年9月9日〜2020年9月20日

豊岡演劇祭2020のフリンジ企画におけるインスタレーション。展示場所は兵庫県豊岡市江原のサンロード商店街・友田酒造・円山川の河川敷の3箇所でした。作品の制作にあたり何度も江原の街を訪れ、アーティストの目線から場所を観察しアイデアを拾い上げました。江原駅周辺の幾つもの地点の観測を作品に結びつけたことを、「観測地点」というタイトルにまとめました。

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・サンロード商店街

私が住む香川県の小豆島発、姫路行きのフェリーの窓から、自分と同じように瀬戸内海を渡ってゆく鳥の姿を見つけました。演劇祭のため豊岡市にやってきた自分を漂鳥に重ね合わせ、漂鳥がサンロード商店街の様々な店舗を覗き込むイメージが頭の中に浮かびました。そのイメージを基に豊岡高校の高校生(木下栞さん・衣川萌々香さん)と共にプロジェクトを行いました。

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まず2人に江原について調べてもらった際、地元出身の人が帰省した際には必ず食べに行くというバーガーショップや、新しい文房具が入荷していないかこまめに覗きに行くという書店など、外観からではわからない個性溢れる店(店のオーナー)や地元とのつながりが見えてきました。そこでアーケードの通路を歩きながら店の「内」の様子を伺い知れるよう9つの店舗内を写真に収めました。写真の中で2人はそれぞれオシドリの剥製を持ち、ポーズを取ってもらっています。2人のポーズは店の中の「音」を探している様子を意味しています。喫茶店ではコーヒー豆を挽く音、焼き鳥やお好み焼きを焼く音、新しく届いた雑誌の封を開く音など採集した音は、商店街の店舗「Lobby」内で流しています。
このプロジェクトの実現にあたり、地元の店舗オーナー、木下栞さん・衣川萌々香さん(豊岡高校)、イガキフォトスタジオ、豊岡演劇祭2020事務局コーディネーター・Lobbyオーナーの渡辺瑞帆さんのご協力をいただきました。

・友田酒造

友田酒造は、かつて自前の日本酒の醸造も行っていた歴史ある酒蔵です。初めて蔵の中に入った時、天井からうっすらと光が差し込む蔵独特の空間に惹かれました。訪れた時ちょうど日本酒の瓶を洗っており水の音が響いていたことも印象に残りました。そして、オーナーの友田さんとお話しした際に、酒造のすぐ裏手の河川敷には“鹿が出る”、“江原の駅前に熊が出た”と聞き、人の生活がなんと自然に近い場所なのかという驚いたことが展示のアイデアにつながりました。

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酒造内の最初の展示作品は、真夜中の円山川の河川敷を撮影した映像です。左奥に江原河畔劇場が見え、信号機の点滅が瞬いています。人が寝静まる頃に現れた鹿が河川敷を歩く姿は非日常的でありながらも、江原の生活のすぐ側にある風景であることを示しています。

壁に投影されている光に映る黒い点は、私が円山川の中で見つけた「ヒメタニシ」です。「ヒメタニシ」は水中の藻などを食べ、水を浄化してくれるといいます。プロジェクターによって数十倍の大きさに拡大し蔵の壁に張り付いているように映し出した「ヒメタニシ」の姿は江原の自然の姿をダイナミックに切り取ることを狙いました。水を浄化する「ヒメタニシ」は、私が酒造で聞いた「水」の音にも関係しています。

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3点目の作品は、酒蔵の空間を横切るよう吊るされた約70枚の青焼き写真です。青焼き写真とは、太陽光(紫外線)による化学反応を利用した複写技法です。それぞれの写真には、私が森に入って切り出してきた様々な種類の植物の枝葉が複写されています。

車の音や人の声も届かない森の奥で目を閉じると、自分以外の生き物の気配を感じます。何十枚もの写真が蔵の空間を横断するような展示構成によって、私が切り出した自然の姿と蔵の薄暗がりの空間が組み合わせることを意図しています。 展示の実現にあたり、友田節子さん・友田謙二さん(友田酒造株式会社)に会場の提供を始め、様々なご協力をいただきました。印象的なライティングを照明家の井坂浩さんに担当していただきました。また会場整備にあたって有志の方々に清掃のご協力をいただきました。

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・河川敷

円山川の河川敷で「∞」の形が現れるように河川敷の草を刈った作品です。

「10年の種」という言葉をある農夫から聞きました。「草刈りをしても直ぐに新しい草が生えてくるのは、地面に10年分の種が埋まっているからだ」という意味だそうです。作品は河川敷の草を部分的に刈り取り、演劇祭の会期中(会期後)草が刈り取られた部分が再び覆われるまでの過程を通して、日々変化する自然の気配と河川敷から広がる風景を体感してもらう意図があります。

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作品は堤防の上から見るだけでなく、刈り取られた「∞」の部分を歩いてもらうことによって周りに広がるマクロな自然の姿と綺麗に刈り取られた足元にあるミクロな自然の姿の両方を体感してもらいたいと思っています。

「∞」はステイ・ホームが呼びかけられ、場所の移動が制限されたたコロナ禍の状況を「ぐるぐると同じ場所を回る」形として着想したものです。「よく見て観察すること」を通して地面から出てきた新芽や動物の糞などを見つけることができます。同じ場所にいることをネガティブ(否定的)に捉えるのではなく、当たり前だと思っていた日常の中からも様々な示唆・発見があるはずだというポジティブ(前向き)な意味が作品に込められています。

このプロジェクトの実現にあたり、前田喜久夫さん(日高機械センター)のご協力をいただきました。

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